「2画面ドキュメンタリー無人の町から8年」(3月8日NHK総合22時)

   3.11が近づき各局で東日本大震災を扱う番組が増えてきた。その中でたまたま目に留まった表記の番組を見た。福島県内で8年前に撮影した同一の場所を再び訪れ、8年前と現在を左右2画面で対比していく手法で、8年間の変化が一目瞭然だった。痛切に感じたのは破壊された町並みが、8年たって倒壊した建物やがれきがきれいに消え、全く人気を感じない広大な更地や雑草地になっていることである。これを復興というのだろうか。阪神淡路大震災では多分8年後は以前と変わらぬビルが立ち並ぶ光景になっていたと思う。この2つを比べて、東日本大震災は私たちが直接経験した自然災害では、けた違いに巨大な災害だったことを思い知らされた。2画面を見比べて、むしろ被災当時の方が人々の体温を感じさせてくれた。この無機質な空間に人の息吹が帰るまでの長い道のりを想像させ、新しい手法のドキュメンタリーだった。   (平林 光明)